さようなら

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いつからか 桜を愛でながら弾いていたピアノが 窓際でぼんやりと長い指を顎に当てながら物思いに耽る久嗣のために弾くようになった 『無口な音楽教師』と『地味な女子生徒』 その二人が指を絡めたのは …ふとしたきっかけ 二年生の夏、緑の葉が生い茂った桜を眺めながら弾いていたのはサマータイム 「珍しいな、饗庭…ガチガチのクラシック以外も弾くんだな…」 急に聞こえた蝉時雨、防音扉を開けて入ってきたのはこの部屋の主…先生だった 「あ、こんにちは…はい…この曲は好きなんです…」 いつも、私が好き勝手弾くのを黙認し、隣の音楽教員室にいた先生が 扉を開けたからビックリした… 「いいな、サマータイムか…今にピッタリだ…今のその桜に合うな」 指差した先が外の桜 「え…あ、はい…」 (サマータイムが夏の桜に合うなんて初めて感性が合う人がいた) その窓の外を指さした横顔が美しくて思わず息を飲む… 男性を見て美しいなんて初めて感じた そこからは私が先生に恋い焦がれて 音楽室に通うようになった…
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