Feast(最後の祝宴)- 開幕

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会長と盃を交わしながら雷門を、龍仁会を狙っていたということになる。 ホストクラブ・シャングリラのことも、北海道も、九州も、薬品工場のことも、副会長・佐々木の爺さんを煽ったのも・・・・すべて蓼科の六条なのか。 「こりゃ、面白い余興ができたな」 「会長!」 何をのんきなことを言ってるんだ。 相変わらず、息子が繰り広げる命のやり取りを見世物のように笑みさえ浮かべて高みの見物をするのか。 「アンタって人は」 「この勝負、國府田ぁ・・・お前が勝ったら何が望みだ」 「雷門虎太郎の命をもらう」 「ほぅ・・・それは参ったな」 参ったという割にさっきより口角が上がっている。うっすら白い歯まで見せているじゃないか。 「アンタなに暢気なことを・・・・」 そこまで言って何も言う気にならなくなった。 この人はこういう黒いゲームがとても好きなのだ。特に命を懸けた試合は彼を興奮させる。そしてその試合に一度も負けたことがないという恐ろしく悪運を持った男なのだ。 「いいだろう、國府田。ただしお前の命を俺の命と同列に並べることができると思うなよ」 「そんな・・・・俺には自分しか賭けるものはねぇ」 「いや、あるだろう。蓼科会の全権だ」 「それは・・・・」 「お前、ここに来る前に六条のオヤジさん殺したろ」 「なぜそれを」 「この雷門虎太郎を舐めるな」 会場の龍仁会の組長たちも息をのんだ。会長の表情は悪魔のように冷たい笑みを浮かべていたからだ。その気迫を感じて誰一人微動だにしなかった。 「じゃあ、改めて・・・・桂斗、お前が勝たんと俺は死ぬ。頑張れや」 「ふん、お前が死んでもいいと思うがな。コイツの思い通りになったら嫌だし・・・・それに俺は負けるわけがない」 「自信家め。まぁハンデもあるわけだし、応援はしてやるよ」 「ふん」 桂斗は鼻で笑って正面の國府田を見つめた。 小休止していた動きがまた早くなる。桂斗の拳はどんどんと國府田に打ち込まれる。 寸でのところでかわしていたものの、ヒットするのは時間の問題だ。 雷門組長の動きは早くて柔軟だ。ときどき出る國府田の拳も、まったく彼をとらえられない。 「速い・・・・それに生き生きしてる」 「なかなか現場に出ることはなかっただろうからな。今アイツは誰にも止められねぇくらい、この状況を楽しんでる」
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