6 覚悟の重さ

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しかし、そのおかげで気掛かりだったことも解決できた。 私は、ノルンと出会ってから、ずっと気になっていたのだ。 ノルンがルリーシェを呼ぶ、『生贄の子』という呼び名が。 ルリーシェは気にしていない風だったが、あれはいけない。 彼女は、もう生贄とはならないのだから。 だから、ノルンに説明し、頼んだ。 彼女には、生まれ持った名がある。 今後は、『生贄の子』ではなく『ルリーシェ』と呼んでやってほしい、と。 私の言葉に目を見開き、驚いていたノルンだったが、即座にその意味を理解してくれた。 これで、良い。 この神殿において、ひとりでもいい。 彼女の傍らに寄り添ってくれる存在は、ありがたいものだ。 これから、さらにルリーシェへの風当たりがきつくなる可能性があるのだ。 いや、きっとそうなるだろう。 私のせいで……。 「――大変お待たせいたしました」 ルリーシェを想い、思考の海に深く沈んでいた意識が、不意に引き戻された。 静かに開いた扉から顔を見せた、黒衣の人物。 独特の(しわが)れ声を持つ、ザライアによって。 「では、先般のシュギル様よりの御書簡について、本題に入らせていただきます」 いよいよだ。いや、ようやく、と言ったところか。 本日中にザライアとこの件について話を済ませてしまいたかった。 だから、夕刻の神事が終わるまで神殿長室でこうして待っていた。 「ご所望の秘薬につきましての、お話となります。 少々お時間を頂戴いたしますが、よろしいでしょうか」 「構わぬ。よろしく頼む」 もう、時がない。猶予は残されていないのだ。 それに、ルリーシェの承諾も得た。 後は、ザライアに秘薬を生成してもらうのみ。
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