620人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
首領様、というと、烏天狗のアヤカシ様を纏める方なのだろうか。
つまり、それはコウ様より偉い方で・・・。
そこまで考えて、兵士のアヤカシ様が私の首の麻縄を引き、私を小さな声で怒鳴り倒した。
「何をしている!今すぐに平伏しろ!」
「了解しました。ですが、そろそろ緩めてはもらえませんか?」
引っ張られ過ぎて首に痕ができているだろうが、それよりも気道が締まって辛いのだ。
「貴様が平伏するならば緩めてやろう。」
その言葉を信じ、少しだけ場所を移動して、コウ様の周りを空けつつ、正座しなおし、手のひらを床にくっつけ、床に額をこすりつけるように頭を下げた。
そのままの状態で、しばらく待っていると(紐は緩めてもらった)、静かな足音が聞こえてくる。
額を床に付けているので、振動がこちらにも伝わってきて。
振動はどんどん近付いてきて、近くで止まった。
恐らく、コウ様の傍らにお座りになられたのだろう。
「・・・久しいな、コウ。」
「ああ。お陰で目覚めることができた。」
「あれは我がしたことではない。許可は出したが、レイやシン、ケイがやったことだ。」
「だが、許可を出してくれたんだろう。それだけで十分だ。」
「ふ・・・。」
静かな声は荘厳な響きで。
尊大な口調の中には、コウ様への優しさ、レイ様シン様ケイ様への労りが含まれていた。
だけれど、どこかで聞いた声のような気がして、思い至る。
少し前、牢屋の中で聞いた声と同じだ。
つまり、私は首領様にあのような態度を・・・!
思わず脳内で自分を殴る。
一人だけで居たならば本当に殴っているところだ。
「そこの者が治してくれたことは知っている。コウを起こしてくれたこと、感謝する。」
そこの者、そこの者、とは・・・私!?
「あ、ありがたき幸せでございます!」
「ふむ。皆の者、面を上げよ。」
静かな声に従って顔を上げる。
目の前には、長髪の黒髪で黒々とした瞳でこちらを見下ろす美丈夫が。
この方が烏天狗のアヤカシ様の首領様なのか。
「お前には褒美をやらねばな。まずは・・・。」
まず!?複数あるのですか!?
ヒュン、と音を立てて、背後で紐が千切れる音がした。
「え?」
振り返ると、するりと紐がほどけ、首元が軽くなった。
「お前が無実だということを証明してやろう。」
最初のコメントを投稿しよう!