壱ノ巻

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土下座しようとする兵士様たちを宥め、土下座を阻止すると。 「ふ、ふふ・・・。」 口元に手を当てて、必死に笑いをこらえる首領様が。 「も、申し訳ございません!」 あああああ、首領様達を置いて勝手に話をしてしまった・・・! 土下座をしようとすると、制止の声がかかった。 その声はコウ様の声で。 「首領は君の必死な様子がツボに入っただけだ。気にするな。」 「え、えええ・・・。」 「返事は?」 「はい!」 「ふふふふふふふふふ・・・!」 なんて混沌。 「あ、またツボった。」 「いつもは笑わないのに、珍しいね。」 「そうだな。」 しばらくお待ちください・・・。 「ふう、すまぬ。お前の狼狽える姿がなんとも面白くてな。」 「そ、そうですか・・・。」 これは褒められているのだろうか?貶されているのだろうか? 「さて、褒美がこれだけで終わると思ってはおらぬな?」 「え・・・。」 「コウの暗殺を試み、お前を貶めたあの人間どもはしっかり人間の法で裁いてもらう。我らが捌いてもいいのだが、コウもお前も望んではおらぬようだしな。」 さばくの字が違うの気がするのですが・・・! 「次に、とりあえずの金をやろう。」 そう言うと、何かを咥えた一匹の烏がやってきて、なにやら袋を首領様の手に落とした。 「そら、受け取れ。」 両の掌を差し出すと、そこに首領様が袋を置く。 その瞬間。 「お、重い!?」 いや、これ袋で来た時点で普通と違うことは分かってたけど、ここまで重いって・・・! 「当たり前だ。我ら烏天狗の幹部筆頭の命を救ったのだから。」 といっても、私はやるべきことをやっただけで、ここまで大量のお金が欲しくてやったわけではない。 かといって、こんなにたくさんはいらない、と突き返すと、向こうの面子も丸つぶれであるし、コウ様の命はこれより少ないというのか、といって殺されそうだ。 ということで、私は何も言わずに頭を下げた。 「もう一つ。これで最後だ。」 そう言って差し出されたのは、真っ黒で艶やかな烏の羽。 どよめきが広がったため、これは特別ななにかなのだろう。 お金の袋を傍らに置き、再度両の掌を差し出し、受け取る。 見た限りでは艶やかな羽以外のなにものでもなくあのどよめきを不思議に思う。 「まあ、何かは言えぬが、持っておけ。」
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