聴覚のキオク

24/25
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「……く、ヤバ」 辛そうな彼の顔が目の前にある。 その頬に手を伸ばすと彼の名前を呼ぶ。 「だから、そういうのだって」 私の中で彼の存在が動いたような気が、した。 私が彼に名前を呼ばれると奥に響くように。 彼の名前を私が呼ぶと、 「だー、やめろって」 響く、いや反応する?らしい。 そんな彼がかわいらしく見えて、微笑んでいると、 「ったく、容赦しないからな」 そう宣言すると彼は私の腰を掴み貪るように動き出した。 吐息と共に聞こえる私の名前。 同じだけ私も彼の名を呼ぶ。 そして、二人の境界線がわからなくなるぐらい溶けあった。 互いの名前を呼びながら。 END
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!