無料案内所が全てを知っていた。

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無料案内所が全てを知っていた。

夜中の一時位だった、会社の近くは風俗街とでも言うのだろうかその街の映画館も胡散臭い焼肉屋も閉まっていて開いている店はホストクラブとコンビニとドラッグストア、そして風俗店位だった。 ブラック企業に就いてから三年と半年、大学を一浪し、バイト漬けで一年間を棒に降り留年、親に迷惑しかかけず四つ上の兄は二流大学を卒業し大手食品メーカーに就職し、類い稀なる企画力で大ヒット商品を産み出した。私が卒業したのは四流大学で就職でも大学の差別を受け名のある会社全てに門前払いを受けた。そこで興味のあったライターの仕事についてみんなも知るスポーツ選手などにインタビューして雑誌に載ってやると息巻いてた。そんなのただの幻想なのに。四流大卒が何言ってんのって話で仕事してみれば残業なんて当たり前、その癖雑誌は売れないからと給料は他の企業に比べ、雀の涙程度で土日出勤も毎回ある。売れない雑誌のライターはやりがいも感じない。そんな私は一体何なのか、それは、 「私は手で優しくシてあげることですね。お客さんからも誉められるんです。」 私は風俗ライターなのだ。吉原や歌舞伎町、池袋に西川口を周り、風俗嬢にインタビューして書いている。親には絶対言えない仕事だ。そして風俗嬢も同じ奴ばかりだやれ優しくするとか、舌使いが上手だの一辺倒でインタビューする意味が分からなくなる。 そんな私は風俗の無料案内所に来ていた。 「すいません、私こういうものですが」 社会人らしい名刺渡し、すると受付のお兄さんが 「ライターの方ですね、どうなされましたか?」 と聞いてくる 「いま、この風俗街で一番の風俗嬢の教えてほしい。」 食いぎみで私は答えた。するとお兄さんは分厚いファイルをペラペラと速読のようにめくり、あるページに指を指した。 「ここはね、凄いっすよ。とにかく女の子全てが可愛い!それでリピーターも多いこの子!かおりちゃんがねぇいいっすよ。」 やはりこの風俗街というフィールドで高い視野を持った人間だ。凄いスピードと説得力で私に問う。 「私に教えてくれ!」 この言葉が出るのも遅くはなかった。 「それでは、紹介料5800円になります。」 と聞いて耳を疑った。 「おい、まて!無料案内所だろ。なぜ金をとる!」 するとお兄さんは 「案内と紹介は別だよ!さっさと払え!」 目の前が真っ暗になった私は5800円を取られた。 無料案内所は良い風俗嬢も社会の厳しさも知っている。
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