空が落ちても

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空が落ちても

 僕は思う。「ささやかな幸せ」という言葉がある。  ささやかな幸せを感じられる人は、この世界にどれくらい居るのだろうか。  幸せを感じる人なら多いだろう。心を十分に満たしてくれる満足感。不足のない充足感。  「あーお腹いっぱい。ごちそうさま。」という気持は理解できる。  けれど、コーヒースプーンで一匙すくったような満たされない幸せを、本当に幸せだと感じられる人はどれくらいいるのだろうか。  多くの人はその満たされない幸せを、幸せだと理解できないのではないだろうか。  むしろ、まだ足りないと不幸を感じるのではないか。  責めるつもりはない。誰でも欲求や欲望、それを満たす為のあらゆる手段を取りたいと思う。  そして、満たされない感情は不安や緊張を生じさせる。その不幸を幸せとするのは、簡単なことではない。  僕は誰からも責められたくない。だから、誰も責めたりはしない。個人を尊重する。「僕は僕。彼は彼。」それは、とてもはっきりとしている。   つまり、僕が訴えたいのは「理解は出来なくても、尊重はできるでしょう。」ということだ。     僕はあなたの迷惑にならない。  そして、迷惑にならない以上、あなたに口出しする権利はない。  あなたの人生に口を出す権利 は、もちろん僕にだってないのだ。  僕はあなたに心を許してない。けれど、あなたに心を許して欲しいとも思わない。  「ただそっと、傍観者の一人でいて下さい。」とお願いしている。  この物語りの主人公をはっきりさせておくために。  主人公が僕である以上、予言のできない結末へと流されようとも、決して筋道立てて進行させようなどとしないで欲しい。僕はこの物語の結末を、ある意味用意していない。  それは、「小説の最後のページが結末だ。」ということを否定するわけではない。あなたが小説を途中で辞めてしまえば、それはあなたにとっての結末であるということを尊重すると伝えたい。つまり、物語の解釈はあなたの好きなようにしてかまわない。好きなようにしてかまわないが、あなたに口出しする権利などないのだ。  これから僕が、何をしようとも。
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