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私が自分の部屋のローテーブルに持って来たトレーを置いて、制服のジャケットを脱いでカーディガン姿になっていると、ケンちゃんがトントンとまた規則正しい音を立てて階段を上がってくるのが聞こえた。 そして、ノックもせずに私の部屋を開けて、入って来る。 持っていた灯油缶をストーブに入れると、人差し指でストーブのスイッチを押す。 そして、私を見て、「女って寒くないの? 足、よく出していられるよね」と小さく震えて見せた。 「寒いよ? ちょっとジャージ履くからあっち向いてて」 「ジャージかよ」 「ジャージだよ」 ケンちゃんは私に背を向けて、自分で持って来たコンビニの袋を漁って後ろ手でそれをテーブルに乗せていく。 私はその間、本当にジャージを出して履いた。 「着たら、音楽つけてー」 「何がいいの?」 「前回俺が置いて行ったテクノ」 「うん」 「聞いた?」 「結構、聞いてる。好きだよ」 「カスミならそう言うと思った」 ケンちゃんの背中は寒そうに丸まっていて、それでもなんだかとても大きい。 下を向いているからカステラの焦げている部分みたいな色をした髪が前に下がっていて、いつもはほとんど見えないピアスがきらっと光っている。
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