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「次はどの花びらが地面に落ちるか当てるゲームをしようよ!」
本気で言ったのか、冗談で言ったのか。
言った本人に聞いてみないとわからないけど、香奈の発想は面白いと思う。
無数にある桜の花びら。
次はどの花びらが地面に落ちるかなんて全く予想もできないし、絶対に当てられないと思う。
限りなく不可能に近い。至難の業どころじゃない。
宝くじで3億円が当選する確率より低いと思う。
それを当てようというのだから。
こうして桜の樹を見つめている間にも、次々と花びらが散っていく。
一枚一枚、また一枚、地面に落ちていく。
桜の花びらは、地面に落ちても桜の花びら。
まるで親元から離れた子供のよう。
できるだけ踏まないように気をつけなければならない。
「いっぱいあるから、あの桜の樹ね」
香奈がいちばん近い桜の樹に向かって指を指した。
「次はあの花びらだよ!」
いつの間にか、次はどの花びらが地面に落ちるか当てるゲームが始まっているよう。
明るい声で叫んだ蓮花は、どの花びらに指を指しているのだろう。
私は全く見当もつかない。
どの花びらも同じに見える。
蓮花は、何を基準にして選んだのだろう。
「あたしはあの花びら!」
香奈も桜の花びらに指を指した。
どの花びらなのかは、香奈にしかわからない。
本当に当たったら、面白いな。
そう思いながら、私も瞬きしないで桜の樹を見つめた。
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