2 切なくも楽しい春の思い出

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「次はどの花びらが地面に落ちるか当てるゲームをしようよ!」  本気で言ったのか、冗談で言ったのか。  言った本人に聞いてみないとわからないけど、香奈の発想は面白いと思う。  無数にある桜の花びら。  次はどの花びらが地面に落ちるかなんて全く予想もできないし、絶対に当てられないと思う。  限りなく不可能に近い。至難の業どころじゃない。  宝くじで3億円が当選する確率より低いと思う。  それを当てようというのだから。  こうして桜の樹を見つめている間にも、次々と花びらが散っていく。  一枚一枚、また一枚、地面に落ちていく。  桜の花びらは、地面に落ちても桜の花びら。  まるで親元から離れた子供のよう。  できるだけ踏まないように気をつけなければならない。 「いっぱいあるから、あの桜の樹ね」  香奈がいちばん近い桜の樹に向かって指を指した。 「次はあの花びらだよ!」  いつの間にか、次はどの花びらが地面に落ちるか当てるゲームが始まっているよう。  明るい声で叫んだ蓮花は、どの花びらに指を指しているのだろう。  私は全く見当もつかない。  どの花びらも同じに見える。  蓮花は、何を基準にして選んだのだろう。 「あたしはあの花びら!」  香奈も桜の花びらに指を指した。  どの花びらなのかは、香奈にしかわからない。  本当に当たったら、面白いな。  そう思いながら、私も瞬きしないで桜の樹を見つめた。 
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