2 切なくも楽しい春の思い出

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 風が吹く度に、ひらひらひらひら舞い降りる桜の花びらたち。  一枚一枚、また一枚、色鮮やかな薄ピンク色の桜の花びらが宙を舞う。  麗らかな春風に乗って遠くまで飛んでいく花びらもあれば、すぐに地面に落ちてしまう花びらもある。  私たちが座っているレジャーシートの上にも、桜の花びらが舞い降りる。  一枚、二枚、三枚、四枚、五枚……ほんの数分間で、ニ十枚ほどの花びらが舞い降りた。  香奈の頭の上には、四枚の花びら。蓮花の頭の上には、三枚の花びら。歳と同じ枚数。  私たちの周りにある桜の樹は、香奈と蓮花の年齢を知っているのだろうか。  散っても散っても減らない桜の花びら。    桜の樹は、いったい何枚の花びらを身にまとっているのだろう。  1、2、3、4、5、6、7、8、9……とてもじゃないけど数え切れない。  1万枚か、10万枚か、100万枚か、それ以上の枚数か。  桜の樹自身は知っているのかな。  何枚あるのか数えたことがあるのかな。
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