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 今思えば、それが僕の中にずっと残っていたのかもしれない。危険な存在は常に自分の周囲にいると自覚しろ。そう言われているようだった。    今日も僕はサバイバルナイフを懐に入れる。    あれから、ナイフを持ち歩くのが癖になった。最初の頃は、好奇心に駆られて持ち歩いていたと思う。まるで世界の秘密を知ってしまったかのように。    でも、次第にそれは別のものに変わっていき、今では学校に行くことと同じくらい当たり前になっていた。    僕は慣れるということをあなどっていた。身体の一部にさえなってしまったナイフはふとした瞬間に姿を現す。ナイフの用途なんて両手で数えられるほどしかない。具体例をあげると、僕は友人にナイフを突き立てたことがある。自分でも驚くほどスムーズに、そして、綺麗に喉元めがけて一直線に振り下ろした。    ただ、喉元ギリギリでナイフを握っていた手は止まっていた。僕は自分自身が強くなったように感じた。    ナイフを突き立てられた友人も驚いたが、僕はそれ以上に動揺していた。自分の身を守るために持ち合わせていたはずのナイフは、いつの間にか誰かを攻撃するための凶器と化していたのだ。    これではいけないと思って、ナイフを何度も手から、体から、離そうとした。けれども、気づけばいつもナイフを持っていた。まるで磁石のように僕とナイフはぴったりとくっついていた。
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