■塩味と苦味■

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■塩味と苦味■

『ハマると地獄を見るぞ』 …親切な忠告を、何を大袈裟な!と笑って流した数時間前の自分を恨めしく思った。 恐る恐る舌先で触れ、隠れた苦味…というか、不純物の味を探る。 隠された微かなエグ味。知ってるものと違う。こんなに違うんだと再確認する。  今ならまだ引き返せるかも知れない。 「酔った勢いで余計な事を言いました。」って謝れば済むかも知れない。ギリギリのラインの真上に居る今ならば… 同じ独身寮とは言え、会社が一棟借り上げた単身者用マンション。部署も年齢も違う他人の居室に上り込むこと自体が初めてだ。 …前々から興味はあったんだ。同じ間取りの部屋で、他の人はどんな風に暮らして居るのか。 好奇心と、先輩社員の勢いに負けてしまった。 自己責任…か。もう腹をくくらなくては。 おそるおそる、その熱の元に手を伸ばした。 熱い。想像以上の熱に不意を突かれ、握る手を思わず緩めてしまう。 ここまで来てやめるなんて言わないよね?と軽く睨みつけられた。気を取り直してもう一度その塊に手を伸ばす。
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