魔王城

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 皆が戦いを繰り広げる中、僕はヒューゴのもとへ移動する。   激しい衝撃が周囲へ広がり、魔力が使えない状態では命が危うい状況だ。なので僕がヒューゴの前に結界を展開しそれを防いでいく。 「ジン、すまない」 「どうってことはないさ。それにしても成功してよかった。少しリスクは高かったけどね」 「ああ。でもお前とアインがいるから問題はなかっただろ?」  まあそれは一理ある。結果、ヒューゴのおかげで皆が再度囚われの身となることなく、清々と戦うことが出来ているこの状況は大成功と言っていいだろう。  こう話している内も僕の結界にも強烈な攻撃が繰り返しぶつかってくる。パテルが腕を振り回す度に魔力と瘴気の竜巻が巻き起こり、部屋中の至る所を切り刻む。口からは魔力が凝縮した熱線を吐き出し、その強力な熱で触れた物を溶かしていった。  これらの攻撃に加え、厄介なのはパテルの再生力だ。体を欠損させられても瞬時に回復してしまう。魔人特有の超再生力に加え、取り込んだキメラの細胞が無限に使われ回復し放題の状態だ。 「これじゃあ切りがない」  マルがそう愚痴をこぼすのも無理はない。四人は小さくないダメージを確実に与えているが、それでも再生速度が上回る。しかもこちらは受けたダメージが蓄積してきている。このままではジリ貧となる。  この四人を相手にここまでやるとは……。 「きゃあ」 「ぐっ」  ここでミアとリアムが奴の攻撃の直撃を受け、盛大に吹き飛ばされた。二人とも何とか起き上がったが、ミアは骨を複雑に砕かれ左腕をダラリと垂らし、リアムは(あばら)を激しくやられ吐血した。  直撃といっても魔法で防御が高まっている状態で、更に結界を展開の上でこのダメージ。僕が即座に怪我を回復させたが、下手をすれば致命傷だ。 「二人とも大丈夫?」 「ジン、ありがと」 「助かった」  そう答える二人。振り向くことなくそれぞれ瞳はパテルを捉え、意志は全く衰えていない。寧ろ更に気合いが高まったようだ。 「ねえリアム、あいつの動き止められる?」 「ハハ、無茶言うじゃん。でもやるっきゃないっしょ」  二人はそう話すが、パテルの動きを止め、ここで一気に決着をつける気だ。
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