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漆黒の闇に浮かぶ桜の舞。
まるで、思い出したあの歌のように。
花が散る。
「行こか」
「…はい」
もう一度、彼の手を取る。
すると、ずっと不自由していた身体が、ふわりと花弁が舞うように軽くなった。
「おばあちゃーん?ごはんだよ?」
近付いているはずの美利ちゃんの声が、次第に遠くなってゆく。
「痛っ!なんか踏んだ?カルタ?おばあちゃん、カルタが落ちて…」
美利ちゃんは、下の句わかるかしら…?
「おばあちゃん!?おばあちゃん!!ママ大変!!ママ!おばあちゃんが…!!」
さようなら。
そして、ありがとう。
私の愛しい人たち。
私は、とても幸せでした。
久方の 光のどけき 春の日に
静心なく 花の散るらむ
*end*
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