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顔を青くしながら腕の主の顔を辿ると……件の天敵、俊弥!
「……後で掛け直す……」
『え? どうし……』
賢司くんの言葉を遮り通話を切ると、わたしを見下ろし影となっている俊弥の顔が、にたりと歪んだ。
「……彼氏?」
「……だったら、何か市川さんに関係……」
言葉の途中で、笑顔を貼り付けた顎を指で挟まれ、顔を持ち上げられた。
「……おい。何なの? その猫かぶり。そんなキャラじゃなかったよね」
俊弥の指が、頬に食い込んでいる。
良い歳して女子に何てことするんだ。『おい』はこっちの台詞だ。
さすがに腹が立ち、応戦してしまう。
「……あれから何年経ったと思ってんのよ……。12年も経てば、キャラなんか変わって当然でしょ」
目線を逸らし鼻で笑うと、顎を掴んだまま顔を覗き込まれた。
昔よりもずっと凄味の増した、蔑んだような瞳が否応なしに目に飛び込んで来る。
「……相変わらず可愛げのない女だな……。久しぶりに会った幼なじみにもっと言うことないわけ?」
その台詞もそのまま返したい、と頭を掠めた瞬間、左腕は壁に突き立てたまま、右手を顔から離した。
かと思うとその手は、わたしの肩上で揺れる髪を摘まみ上げた。
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