君色スカイライン

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 水瀬さんは不思議な人だった。恋でも友情でもない別の枠で私と関わってくれていたような気がする。一方で、ひたむきな恋愛感情を持たれていたような気もする。  空に訊いたら答えてくれるだろうか。  水瀬さんの住む土地は私の隣県。そちらの方角に向き夜空を見上げた。私の体も家々も全て丸ごと飲み込んでしまうような漆黒の闇に、頼りない星々の光がまばらに浮かんでいる。  水瀬さんも今この空を見ていたりするんだろうか。  あんな終わり方をしたんだ。彼の中で私の評価は急降下しているに違いない。二度と関わりたくないと嫌悪されているだろうか。彼は私との関わりをどう思い出しているだろうか。思い出すこともなく忘れたい出来事のひとつとして記憶しているだろうか。  知りたいけど知るのがこわい。  大切にしたいものほど、身勝手な暴走でたやすく壊れてしまう。それを嫌ほど痛感している。それなのにまた優しい何かを求めてしまう。  最後のやり取りについてこちらから何事もなかったかのように謝れば、あるいは全て忘れたような態度で気楽なメールをすれば解決するのかもしれない。水瀬さんは解決したことをほじくり返して根に持つような人ではないのだから。  でも、こちらから謝るのもおかしい話だ。意地ではない。謝ってしまえば、それまで築き上げてきた彼に対する尊敬や信頼も否定されてしまう。それだけは嫌だ。  好きだから謝りたくない。面倒な感情だと分かっている。だけどここから動けず、今日も鳴らないメールの音を待ちわびる。  良い感情は必ずしもプラスに働くわけではないのだと改めて知った。  星に想いが届くのなら、遠くの水瀬さんに伝わっていてほしい。そして、あの頃の彼の真意が知りたい。あの安らかで暖かいやり取りの時間が、再び訪れてほしい。少なくとも私はあなたを嫌ったりなんてできないのだから。 《完》
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