君色スカイライン

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 しばらくして、水瀬さんから何気ないメールが来たけれど、先の件でわだかまりが消えないままだったので冷たい返信をした。それきり彼からメールは来なくなった。  水瀬さんとのやり取りが途切れて早くも三ヶ月。こんなにメールしなかったのはこの六年間で初めてだ。もう二度と彼とメールをすることはないのかもしれない。  あっけなかった。六年も関わっていたのに。切なくなる。でも、よく考えると、メル友の六年なんてリア友の一年にも満たないのかもしれない。だったらいつ消えてもおかしくない。  幼い頃に身内との別れを経験したからか、私には人への執着心があまりない。絶交した友達や元カレも何人かいるけど、誰のことも特に引きずることはなかった。  私は冷たい人間なんだと思う。それなのに、なぜだろう。水瀬さんと関わった時間のことだけは色濃く胸に残っている。  初めて小説に感想をくれた人だからだろうか。そこから興味を持ってもらえたことに感激していたんだろうか。  小説の創作は自分自身を徹底的に落とし込んで仕上げる真摯な作業。作品は私の分身みたいなものだ。それを好意的に見てくれる人がいたら好感を覚えるのは当然だ。
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