第2章 新チーム始動

4/22
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
 そう言うと玲央も呆れたように溜息をついた。その間にも「ヘイ!セカンド!」という声を出して二遊間センター方向に打球を転がす。そのボールにセカンド荒木が追いついて一塁へジャンピングスロー。しかしそのボールは一塁手である飯田の遥か頭上を通過していって大体一塁側ベンチの目の前くらいのところで跳ねた。 「昼休みにつぐみから知らない転校生から告白されたって相談されて正直驚いた」 「つぐみって誰?」 「宗介のクラスでしょ?高橋つぐみ!アイツに告白された可哀想な子」 「あぁ、あの子そんな名前だったのか」 「クラスメイトの名前くらい覚えておきなよ・・・」  そう言って玲央はまた一つ、ため息をつく。 「いや、苗字は知ってたからセーフ。それよりあの子お前と仲良かったの?」 「まあね。ほら私、顔広いから」 「へぇ~。中学までぼっちだったのに、ぐへぇ!」  ボディーに硬球を投げ込まれ、思わず変な声が漏れる。硬球はマジで痛いからやめて!いや、軟球も痛いけど・・・。 「いらない事は言わない方がいいよ」 「はい」 「ライト~」と声のボリュームを落として今度はライト方向に高々とフライボールを打ち上げる。しかしその小さな声をライトの鈴木先輩は聞き取れなかったようで、あさっての方向を向いていてストレッチを続けていた。なので改めて「ライト!」と大きな声を出すと、そこでようやくこちらに気づいて打球を追いかけ始める。が、無常にもボールは鈴木先輩の前にポトリと落ちた。  鈴木先輩は素早くそれを拾い上げると、ホームに向かってボールを投げてきた。それもレーザービームのような弾道の低くて速いボールを。  大きく三塁方向にズレたので別にその場にいても当たらないのだが、そのあまりの威力に俺は「うぉっ!」と慌てて飛び退いた。隣にいた玲央は、特に驚いている様子はなく、まださっきの事を引きずっているのか多少ふくれっ面になっている。 「おい。お前のせいで鈴木先輩を怒らせちまっただろうが」  俺が咎めるような視線で玲央を見やる。しかし彼女は「知らない」と言ってそっぽを向いた。鈴木先輩は普段は何をされても全く怒らない人だが野球になると話が違う。こういうノック一つにも真剣で妥協を許さない。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!