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「私は奈々だよ……」
「だから奈々は2年前に事故に……」
誰も分かってくれない。
私は母親の言葉を無視して走り出した。
行く宛てもなくて、走ったところで目的もないのに私は思いっきり走った。
現実から逃げ出すように。
そして走って走って、ようやく足を止めた場所は……。
「寧々ちゃん……」
あの子がいるところだった。
父親の逮捕で私は誰も友達がいない。
いや、逮捕されていなくても頼る人はいなかった。
私はずっとひとりぼっちだった。
姉の寧々がいなくなった今、
頼れるのは、私の友達ではなくて、寧々の友達だけ。
今、私を寧々だと思っている女の子だけだった。
「助けて……」
たとえ、世間の目が冷たいものだったとしても
同じようにその目を向けない子。
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