初デート

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「よしっ!」 私は自室の大きな姿見を前に気合いを入れた。今日は私と彼の初デートだ。ドレスもメークもいつも以上に気合いが入っていた。ドレスは彼によって強引に変えられた桃色の瞳に合うように赤色に、メークも桃色の瞳が映えるように薄化粧にした。腰近くまである黒髪は後ろに流し、サイドを頭の後ろでまとめたハーフアップにした。 私が彼と彼の専属魔導師の二人によってこの異世界に召喚されてからもう四カ月が経とうとしていた。最初はちょっとマイペースで強引な彼に不信感を抱いていたけれども、彼の過去に触れ、様々な出来事を二人で乗り越えたことで、私達の絆はーー愛は深まった。 最近は軍人という仕事柄、なかなか休みを取れない彼が気を遣って数時間しかない僅かな休憩時間も屋敷に帰宅して顔を見せてくれるようになった。異世界に召喚されたばかりの頃は、平気で一週間や一カ月屋敷の使用人達に任せて軍の屯所から帰って来なかった。帰宅しても大抵夜半過ぎであり、気がつくと私の隣で勝手に寝ていて、なかなか生活リズムが合わなかった。 そんな彼がようやく休みを取り、まだ屋敷から出たことがない私に近くの街を案内してくれるということになったのが昨日の夜であり、それからメイドと慌てて用意をしてなんとか間に合った。 私は彼が迎えに来るまで再度姿見を確認していると、控え目なノックの音がした。私が返事をするとメイドが入ってきた。 「レオン様がお迎えに来ました。部屋にお通ししてもよろしいでしょうか?」 ーーいつもはメイドに取り次ぎを頼まないで勝手に入ってくる癖に。 私が頷くとメイドは下がった。代わりに彼ーーレオンハルト・ルイ・バルンチェが入ってきた。 「アリーシャ、準備は出来たか?」 私ーーアリーシャは姿見に背を向けて、レオンの方を降り返った。 私の本名は有紗であり、アリーシャは発音に馴染みがないレオンが勝手につけた名前であった。今ではこの世界での名前として周囲に定着しつつあるが、最近ようやく慣れてきた。 私はレオンに何と言われるか緊張をしながら返事をした。 「ええ、出来たわ。レオン。どうかし……」 「可愛い」 私が言い終わらないうちにレオンは感想を言った。そして、つい口が滑ったとでもいうように、顔を赤くして顔を逸らした。
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