第一章 その名は

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『秋子さん』 その人はまるで物語の中から飛び出してきた人物のような人。 彼女と出会ったのは専門学校を卒業した春。 夢を諦めずに頑張ると決めた私は、就職活動せずにアルバイトを始めた。 よくある100円ショップ。 たまたま家の近くで、仕事も簡単そうという理由で応募し、面接を受けた。 私は、面倒くさがりやで高校も家から近いからという理由で選び、専門学校も電車が楽だからと選んだ。このアルバイトもそうだ。 私は人見知りで緊張すると汗がでてパニックになる。そんな性格が災いして素の自分を表現することがなかなかできなかったりする。 アルバイトが全くの未経験だった私は、仕事というものをわかっていなかった。社会に出るという厳しさを何もわかっていなかった。 4月のあたまに面接を受けて、1週間経つぐらいに採用の連絡があり、中旬から始めることになった。 最初の3日ぐらいは研修があるようで希望した店舗以外の大型店舗に行くよう言われた。 初めてのバイトで心臓がこれでもかというぐらい緊張しながら初めていく大型店舗での研修が始まった。真っ先に教えられた仕事は接客用語、対応だった。『いらっしゃいませ』『ありがとうございました』『申し訳ございません』と言った感じだ。 その次には品出し作業だった。商品をひたすら出していくという作業。これは簡単なようで初めての私には難しかった。同じ商品が並んでれば同じように出せばいいが、ないときはこの隙間に出していいのか?どの棚に出せばいいのか?などわからないことだらけになった。ずっと誰かがついてくれれば聞けるが忙しかったのか『ここにある物を出していってね』と言われて、行ってしまった。私は人見知りで聞きに行けずヤケクソになり適当に出していった。 そんなこんなで3日の研修が終わり、希望店舗に初出勤した。 私はオープンから17時勤務を希望していたが、13時からラストに入ることになり遅番だった。 そこに秋子さんはいた。彼女は遅番の人。私の直属の先輩となる人だった。 萩野秋子。みんなから秋子ちゃん、秋子さんと呼ばれていた。彼女との出会いが私の人生の価値観を変えたんだ。
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