序章

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 「おい、まだ見つからないのか。」  「申し訳ありません。このように強い雨では、視界が悪く、足跡も消されるため、思うように追跡が出来ません。」  ロウソクで照らされた部屋で、豪華な着物を羽織る男。  部下の慌ただしい姿を、ただ静かにみていた。  そして、呟いた。  「もし、見つからなければ、お前が代わりに処刑されるのだ。」  指差した先に立っていた男性は、蒼白な顔をしながらこう答えた。  「はい、喜んで自分の命を、貴方様に捧げます。」  そして、頭を下げ、敬服の意を表した。  その場に居た他の者も、同じように彼の真似をした。  「良い返事だ。明日が楽しみだ。」  軽やかな足取りで、部屋を立ち去る男性。  その場の空気は、冷たく、重く、苦しく感じられた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!