20人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
鞄を机に置いてストン、と和泉くんが座る。そして間を空けずにわたしを見る。穴が開くぐらいに。
「えっと……長谷さくらです。よろしくね」
自己紹介すると、彼はポカンとした。
「君が長谷さん?見えてんの?」
「はい?」
つっけんどんな口調でこの人は一体なにを言い出すのか。
「見えてんのって?どういうこと?」
「こっちが長谷さんだと思った」
和泉くんが指差したのは彼の左隣、窓際に座っている渡良瀬(わたらせ)くんだ。ちなみに渡良瀬くんは机の下でスマホゲームに興じていて、こっちの会話なんてちっとも聞いていなかった。
「残念だけど、わたしが長谷です」
ふむ、と妙に納得した和泉くんはそれっきり喋らなくなった。さっぱりわけがわからない。
見えてんの?って言ってたっていうことは、なにか見えるはずのないものがわたしの視界に映ってる可能性があるってことなのかな?
例えばなんだろう……和泉くんが連れてきた(もしくはついてきた)幽霊とか?おばけとか?
でもそれじゃ非現実的すぎるし、わたし霊感ないし……あ、もしかして和泉くんの心を読んだのかも。わたしが名乗ったタイミングと和泉くんがわたしの名前を知りたいって心の中で思ったのが一致して、驚いたから「(心の中が)見えてんの?」って言ったのかなぁ。
最初のコメントを投稿しよう!