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「あっ、飛行機うごいてる!」
いつのまにか飛行機は動き出して、窓の外に小さな灯りが点々と見えてきた。
くねくね曲がったり真っ直ぐ進んだり、早くなったり遅くなったりして、それから飛行機はビタッと止まった。
まるでかけっこの前に深呼吸するみたいだ。
「今、滑走路についたのよ」
ママの声と同時にゴーッと音を立てて飛行機は勢いよく走り出した。
どんどん走って、どこまで走るんだろうと思ったとたんにフワッと浮いて、それからぐうっと体が押さえつけられるような感じがした。
首を伸ばして窓を覗くと、建物の明かりが一瞬だけ、小さく見えた。
あの明かりの中のどれかに、美鈴ちゃんがいるんだ。
バイバイ、美鈴ちゃん。
小さな窓に顔をくっつけて、こっそり涙を拭ってから、ボクは大きな声で言った。
「ボク、ドイツででっかくなって帰るんだ」
「うん」
ママのあったかな手が、
そっと頭を撫でてくれた。
ボクは未来のおむこさん・終
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