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そして、昔のことを思い出した。
あの男性の顔、大翔の実家で見たことがあったのだ。
大翔やその兄弟の子どもの頃の写真が飾られている中、古い写真があって。
大翔のお父さんが子どもの頃の写真だった。大翔のおじいさんとおばあさんも若い頃の写真。
とても幸せそうで、きれいな桜の前で撮られた写真だった。
『それ、おじいちゃんの唯一の写真なんだ。写真嫌いだったらしくてさ』
『そうなんだ。でもとてもいい笑顔で写ってるね』
『うん。俺が小さい時に亡くなっちゃって、あんまり話した覚えもないんだけど、桜の花が好きだったらしい』
『そうなんだ、桜かぁ。私も好きだなぁ・・・・・・』
『みんなで桜を見た大切な思い出だって。みんなで写真を撮ったらしい』
写真を眺める私の横で話してくれる大翔の笑顔が、写真の中のおじいさんの笑顔と重なったのを思い出した。
そして、その写真の中の桜は、八重桜だった。
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