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モノクローム
『拝啓 中田涼子様』
この言葉で始まる手紙を書いたのは、三ヶ月前のこと。中学一年生の秋だった。
『拝啓 飯田正弘様』
この言葉で始まる返事をもらったのも、同じ三ヶ月前のこと。今はもう冬。
「おい、マサ」
テレビ画面を見たまま、達哉が言った。無表情でテレビゲームの黒いコントローラを操作している。
「顔がにやけてるぞ、気持ち悪い」
「にやけてない」
ベッドで寝転んでいた俺は、にやけていた自覚はあったが、とりあえず否定した。
「また手紙か」
達哉とサッカーゲームで対戦してた順が言う。こちらも無表情で、黒いコントローラを高速で操っていた。
俺は起き上がり、胸を張って言い返した。
「うらやましいんだろう」
「誰が。お前、ちゃんとまともな文章書けてるのか」
「本も読まないくせにな」
やつらのツッコミは容赦ない。そして俺はいつの間にかボケ担当。
いや、それにしたってな!
「お前らのアドバイスに従ったらこうなったんだろ!」
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