きっと僕らのその先は

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掴まれた肩に感覚が染みつき始めた頃、ようやく志のは涙を止めた。 少し突っ張ったような頬に出来た涙の跡を自分の手で撫でると、結露したグラスに手を伸ばし徐に中に入った水を一口含む。 沸騰した頭には少し冷たすぎる液体を流し込むと、喉元を通る冷たさに少しばかり頭が冷えた。 そして、肩に置かれていた明科の両腕をそっと弱い力でその場から離した。 「禾几・・お前、・・・ぐっ、・・ッいっで!!」 「あんたに説教される程まだ落ちぶれちゃいないわよ」 「お、おまっ・・」 お腹を押さえ、若干屈んだ体制になった明科を今度は志のが見下す。その右手は綺麗に拳が握られていて、遠目でも鳩尾を殴った女と殴られた男の絵が綺麗に完成されていた。 吹っ切れた様な清々しい顔をした志のはもう一度グラスに口付け、水を飲み濡れた唇をそっと手で拭う。そして高らかに息を吸い込んだ勢いで大きく声を上げた。 「あーあ、すっきりした。」 「お前、今度こそ許さねぇぞ。思いっきり殴りやがって・・」 「何がよ」 「何がじゃねぇだろ!酔っぱらいの癖にやけに力が有り余ってるじゃねーか、その調子で馬鹿なお前を振った有能な元カレも殴って来いよ」 鳩尾を擦りながら明科が噛み付くと、酔いもある程度冷め始めていた志のはそれすら聞こえないかのように余裕な顔を見せる。そこには、さっきまでさめざめと泣いていた女の影はもうどこにもなく、背筋が伸びた綺麗な姿勢で水を飲み続ける気高いシルエットのみ。 「殴りに行く手間をかけるくらいなら最初から刺しとけばよかったかなー」 「代わりに俺をの殴るのは筋違いだとは思わないのかよ」 「そうね、殴るのは筋違いね」 溜息交じりに損したように言葉を吐き出す明科の横顔を見て志のが薄っすらと微笑んだ。 口に付けたグラスがあと一歩のところで口に入らず、その表面だけを濡らす。 カタンと音がして、手放したグラスに冷やされた志のの左手がぶっきらぼうに不満の顔を浮かべる明科の胸元を再度掴み、思いっきり引っ張った。 「・・っおいーーー」
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