26(承前)

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 ジョージがいった。 「建造するには何年もの歳月がかかるのに、破壊するときは一瞬だな」  敵の航空母艦のことなのか、友軍の旗艦空母のことなのかわからなかった。南洋の火山島をはさんで、どちらの空母も今沈もうとしている。海に浮かぶ山脈のような巨体が傾いていた。ぱらぱらと砂粒のように零れ落ちていくのは救命胴着を身につけた若い海兵たちだった。  潜水艦から発射された魚雷は海面近くを白い尾を引いて、最後に残された最後の敵の航空母艦に向かって突進していく。同時に味方潜水艦の艦首が青い水面を割って急速浮上した。クジラのように鼻先を高々と浮かべ、全長94メートルの黒い艦影が出現した。海上にはつぎつぎとゴムボートが投げられ、乗組員が海水の渦巻くデッキを駆けまわっていた。 「急げ、急いでくれ」  タツオは気がつけば漏らしていた。早くも敵の警戒システムにキャッチされたようだ。16本の魚雷と入れ違いに、戦闘機がこちらに向かってくる。
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