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◇ ◇ ◇
数日後、俺はソルと一緒にアパート上空に待機していたUFOに向かった。子どもを産み、育てるためにソルの星に向かうのだ。
ソルの星に行ってしまえば、もう地球に帰ってくることはできない。いくら人間関係が希薄な俺でも、地球を離れることが寂しくないと言えば嘘になる。でも、それ以上にソルと離ればなれになってしまうことの方が辛かった。
「ユウト、本当に寂しくありませんカ?」
UFOの窓から外を眺めていた俺に、そっと寄り添い優しく声をかけてくる。
「大丈夫だよ。ソルがいるから、寂しくないよ」
ソッと手を伸ばしソルの手を取ると、冷たい手が柔らかく握り返してくる。そんな小さな仕草が嬉しくて、自然と笑顔になってしまう。
「ユウト、そろそろ出発みたいですヨ」
フッと、身体にエレベーターに乗った時のような負荷がかかる。そして、フゥオンと不思議な音がし、窓の外に広がっている慣れ親しんだ街の光景が遠ざかっていく。
自分の選んだ現実をキチンと受け止めようと、その光景を見届ける覚悟はあった。でも、実際にそれに直面すると、やはり胸には不安が広がっていく。
「ユウト。ボクはずっとユウトの傍にいマス」
俺の手は小刻みに震えていた。ソルは俺から出てくる不安を受け止め、手を強く握ってくれる。その優しさと、かけられる言葉に涙が滲んでくる。
「……うん、ありがとう。ソル」
俺たちは手を強く握りしめたまま、しだいに見えなくなっていく青い星を見続けていた。
【終わり】
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