第1章

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とうとう来た。千石先生も迎えに行き、スタジオにいる。俺はブースに入り、スタンバイする。ガラス越しに目で合図を送り頷いた。 3…2…1… 「こんばんは。ミッチーがお送りする“ミッドナイトマイストーリー”の時間です。今日もたくさんのストーリーが届いています。リスナーの皆さん、ありがとうございます。 早速、いきますよ。 題名がついてますね。 『伝言』 遠い昔の話です。私には将来を誓った女性がいました。私の名は“みなもとのこのうえまさちか”都に立つ時の事でした。 待ち合わせ場所に彼女は来なかったのです。 」 ここまで読んだ時に異変は起きた。机がガタガタと揺れだしたのだ。慌てて柳瀬さんを見る。隣に千石先生がいて、数珠を持って何か言っている。柳瀬さんが続けて読めと合図をしてきた。時計を見ると残り時間3分20秒…ヤバい。読みきれるか…。 「失礼ました。続けますね。 いくら待っても彼女は来ない。最初は何かやむを得ない事態になって遅れているのだと思いましたが…時は過ぎ連絡もつかず、流石に裏切られたと思いました。私は絶望し生きる屍となりました。 ところが、彼女も同じように私を待っていたのです。私と同じように裏切られたと思い絶望してその想いは怨念となり後世に影響を与える程、恐ろしいものになってしまいました。 私達はお互いに約束を守り待ち合わせ場所に行った。だが、私は東の泉で彼女を待ち、彼女は西の泉で私を待った。何故そんな事が起きたのか…それは私に東の泉で待つと伝言があったからなのです。仕組まれたすれ違いが起こした悲劇を500年の時を越えて今、ここに修正しよう。 待たせたね。 さあ、私の所に戻っておいで。とうだいじょうの姫君、我愛しの、ゆきの様。」 残り時間1分を切った…。机がガタガタと揺れ、機材が落ち始めた。ヤバい! あと30秒…俺は叫んでた。 「ゆきの様、貴女はもう待たなくていいんだ!まさちか様と共に、居るべき場所にお戻り下さい。そして、これからは二人で幸せになって!」 …4…3…2 …1…0…タイマーのカウントが0になった…。どうなった?
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