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未定
店の電気は一部を残して全て消している。
入り口にはいつもの『営業中』という看板ではなく、張り紙にして『本日、臨時休業』と『ご報告・・・』という2枚が貼られている。
店の中では普段着のまま、4人掛けのテーブルに座る年配の男性と若者の3人が向かい合って座っていた。
「イサオちゃん。まだ早いって。俺だって、まだまだこの先、商店街の顔役を降りるつもりはないんだからさ。一緒にやっていこうよ・・・」
「礼ちゃん。ありがたい言葉だけど、もうお終いだよ。ごめんな」
「そんな、何で謝るんだ。俺はただ続けてくれと頼んでいるんだけだ」
「だからさ。こうして礼ちゃんに頭を下げているんだ。ごめんなさいと」
もうかれこれ、30分はこの二人の押し問答が続いている。隣に座って聞いている坪井信吾は、自分の店のことも心配だが、昔からなじみのあったお店が閉店するとなると、話を聞きたくもなれば、何とか助けられないかとも思う。
「やっぱりあれか。息子さんの家出が原因か?」と信吾の祖父、坪井礼之介が極めつけの一言を呟いた。
浅野勲(いさお)は一瞬、口を万一文字に閉ざしてから、遠くを見つめる視線を天井に送りながら、「それもあるかな・・・」と悲しげに呟いた。
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