序章

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パソコンのディスプレイに表示された時刻は、22時05分だった。僕はキーボードを叩く手を止め、マグカップに口をつけた。冷めきったインスタント・コーヒーが口の中を潤すと同時に、少し酸化されてすっぱくなった苦味がじんわりと広がった。 ふう、と一息着くと、隣に座っている中津ひとしと目があった。 「あと二時間やな」 中津は、ニヤリと口元を綻ばせ言った。朝、スッキリしていた口元にはうっすらと髭が生えてきていた。 「ああ、これから忙しくなるな」 僕もニヤリと笑って見せた。二時間後には、日付が変わり、3月を迎える。それと同時に、就職ナビサイトがオープンし、企業にエントリーできるようになる。
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