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「色々言いたい事あるだろ? 悪いけど、飯食った後までやめてくれるか?」
「え?」
「飯はうまい方が良いだろ……」
「はい……」
烏賊とか、キビナゴ、生の蛸に車海老。カワハギに鯛に鯵。
串盛りも美味しかった。
結局つくねはお互い、お替わりして食べた。
味噌味の焼きおにぎりも美味しかった。
デザートにさくら餅をサービスして貰って、熱いお茶で締めてお会計は既に終わっていた。
一体どのタイミングで済んだのか全く分からなかった。
途中、手洗いで席を立ったりさえしていなかったのに。
店を出て、取敢えず1万円握りしめて、渡しそうとしたが、元々顔が怖いに入る仏頂面でこれでもかって位嫌な顔をされて、要らないと言われて、とてもじゃないがお金を受け取って貰う事を達成できなかった。
「喫茶店でも入るか?」
「え?」
「すぐ済む話じゃないだろ。居酒屋で出来る話でも、こんなクソ寒い日に外で出来る話でもない。そうだろう」
「……はい」
そうだ。
私、この人にお礼を言う為に来はずだったんだ。
車で九州を縦断する旅をする訳でもない。
鹿児島の美味しい物を食べに来た訳でもない。
私は、玖珠里の息子、玖珠里健人に幼い頃に受けた恩にお礼を言う為に来たはずなのだから。
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