八十六章 北上

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   朝食を取り終えると、早速出立の準備を始めたクレーネーに、リューティスはここに宿泊するにあたって決めていたことを告げた。 「クレーネー、僕は魔物の討伐に行って参ります」 「へ?」 「少し厄介な魔物がおりますので、ここでお待ちください」 「わ、わかった……」  少々残念そうな表情の彼の頭を撫で、リューティスは苦笑する。 「すぐに戻ります」 「うん、気をつけてね」 「はい」  クレーネーに見送られ、食堂で片づけをしていたオーリーに一声かけてから、外に出る。  そのついでに村長宅の裏庭で寝そべっていた彼方の相手をしてから、村の外へと向かった。 「竜騎士様、どちらへ行くんで?」 「見回りをして参ります。すぐにも戻ります」  村の出入り口の近くにいた男に声をかけられて答えるが、男はリューティスの言葉の意味を理解しているのかしていないのかわからない曖昧な表情でうなずいた。 「はぁ……、それはお疲れ様です」  リューティスは深く被ったフードの下で苦笑しつつ、村の外に出た。  魔力と気配を頼りに、昨日見つけた少々厄介な魔物──中級下位魔物のサンダーベアを探す。サンダーベアは雷属性の魔力を身に纏った黄色い熊である。サンダーベア自体はさほど脅威ではないのだが、問題はその身に纏っている雷属性の魔力である。 .
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