八十六章 北上

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   触れてしまえば、雷属性を得意とする魔法師でもない限り、何らかの対策を取らねば感電死する。対策さえきちんととれば恐ろしくない魔物であるが、魔物と戦うことを生業にしている冒険者ならばともかく、林業や農業で生計を立てている村人には、もちろんそのような知識はなく、毎年誤って近づいて感電死する者がいるのだ。  腕の立つ弓使いならば、遠くから仕留めることができる。街から離れた村では、大抵一人か二人、弓を使って下級魔物を狩ることで肉を確保する狩人がいるもので、彼らのほとんどは元冒険者だ。そのため、サンダーベア程度であれば、対応できる狩人がいる村もあるのだが、この村の狩人はサンダーベアを狩れるほどの実力はないのか、もしくはサンダーベアに気が付いていないかのどちらかであろう。  そのどちらであっても、リューティスはあのサンダーベアを狩るつもりである。そもそも、サンダーベアは対策を取って戦いを挑んでも危険な相手であることには変わりなく、わざわざ討伐をしようとする冒険者は少ない。勿論、狩人も同様であろう。だからこそ、宿代代わりの礼として、サンダーベアの討伐を行おうとしているのである。  リューティスは雷属性を持っていないことになっているが、実のところは火属性よりも遥かに得意な属性である。とはいえ、サンダーベアの魔力に触れれば、死することはなくとも感電はするだろう。 .
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