第1章

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解けて床に散った甘い色の髪。すう、とその胸が大きく息をした。 左手を押えたまま、晴明がその肩口に顔を伏せた。 「……ったく、意地汚く出されたものを何でも食うからだ」 「……すまん……迷惑をかけた」 一晩眠った後、博雅は目覚めた。 「手は大丈夫か」 晴明の左腕に新しく布を巻きながら、心配げな視線を走らせる。 「大事無い」 「思い切り噛んでしまった」 牙か爪で傷つけたものか、晴明の右の指先にも血が滲んでいる。 博雅が指を掬い上げるとそれに舌先をつけた。 「……まだ獣の名残があるぞ」 くすりと笑って言われて、慌てて唇を離した博雅が目元を染める。 「かわいかったのに……つまらない」 春波が小さく吐息を落す。 狼の方は術が解けるや否や、屋敷の門を飛び越えて逃げてしまった。 「時々でいいから、姿を変えてみてはくれぬかのう」 上目遣いで請われて、博雅が困った顔で視線を逸らす。 くすりと笑った紗羽が春波の黒髪に軽く指を絡めた。
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