第一話 異端者

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第一話 異端者

「やっと…やっと出来た!これで、あの子の願いを叶えてやれる」 その者はそれが出来上がった瞬間、少女の笑顔が思い浮かんだ。 そして過去を振り返る。 風は爽やかに香り、 花々は色とりどりに咲き乱れ 果実は競うようにたわわに熟す。 木々は朗らかに風に舞い 鳥たちは精霊達と無邪気に歌い、そして語らう。 湧き水はこの上なく透明で生命の輝きを宿し、 小さな小川となって流れていく。 やがてその小川は大きな川となり、湖へと続いていくのだ。 誰もが笑い、誰もが幸せで誰もが平和な場所…。 そう、ここは天界。 あなた方人間には「エデン」「オリンポス」 「エリュシオン」「アルカディア」…等と言われているだろうか? 身の周りの雑用や事務仕事等は全て天使達に任せ、 最高神ゼウスを中心に神々が気ままに恋を楽しんだり 美味しいものを堪能したりと 神であるが故の特権を最大限に利用し、謳歌していた。 そんな中、 ゼウスとその正妻ヘラを始め 神々に一心に寵愛を受けている天使がいた。 その天使は、 ほとんど美男美女しか居ない天界においても 群を抜いた類稀なる美貌と才能に溢れ、 神に最も近い「最高天使」と言う地位を与えられていた。 その名をルシファー(光をもたらす者)と呼ぶ。 天使は神にとって都合の良いように創られた為、 神の命令は絶対服従である。 逆らえば即刻無に返されてしまうのだ。 天使達に与えられた力は各自異なり、 それぞれに魔術や武術等が扱えるように創られている。 …これだけ平和であるのに、 魔術はともかく武術も与えられているのには いささか矛盾も感じるが…。 ある者は飛びぬけて美しい声で神々をウットリさせたり、 またある者は物語を創作して神々を楽しませたり、 ある者はマッサージ等で神々を癒し、 楽器を奏でる者、 掃除や整理整頓が超高速で出来たり、 演劇で楽しませたり。 いずれにしても、 快楽、ポジティブな力を与えられていた。 だが、その者はただ独り異端だった。 その者に与えられた力は 神々達が過剰に吸収し過ぎてしまったものを 「吸い取る力」だった。 これは 「癒し」も過剰になり過ぎると「怠惰」になり 「楽しさ」も過剰になり過ぎると「退屈」になり 「情熱」も過剰になり過ぎると「暴走」になったり 「快楽」も過剰になり過ぎると「苦痛」になる等々...
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