夏模様、みずいろゾーン

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 立入禁止なんて思わせぶりなバリケードだなあ。たかが水たまりなのに。小学校の鉄棒って、これくらいの高さだったよね。またぐのは無理だから、両手で体を支えて持ち上げて、よいしょ。 「てかあっつ、太陽であっつ、あつ、つつっ、たぁ!」  ぐしゃっと落ちた。良く分からん姿勢で濡れた。水はぬるかった。制服が張り付いてベトベトする。全然さわやかじゃない。わたしの想像と違う。水は冷えてろよ。夏なんだから。  どんくさい人間は水溜りの中に入れないんですかね。 「あーあ」  考えるのが嫌になって立ち上がると、ぶろろろろろと音がして、なんか来た。バスが路肩に乗り出して、ぐわんぐわんと揺れながら私と水たまりと立入禁止を通り越し、道路に戻った。手を上げる。バスが止まる。自由乗降区間は合図しないと止まってくれないから。ふらふらと歩いてドアから乗って、エアコンの冷気が当たって、なんだか生き返った心地がする。  一番後ろの席にチカ子がいた。足を組んで涼しげな顔で夏の田舎景色を眺めている。窓に写る目と目が合った。私はカバンをドサッと降ろしてチカ子の隣に座り、大きなタメ息を一つ。はあ。とりあえずなんか言っとこ。 「パンツ何色?」  チカ子はニコッと笑って言った。 「水色」
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