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沙羅が首にしがみついた事で、ポロシャツの胸元が開いているのに気付いて、唇を食まれながら朝陽がボタンを留めた。
「小型の肉食獣って危ないんだよ」
「まあ、確かに」
真剣な顔で諭され、思わず納得してつられて神妙になる。
あの兄が朝陽を優先でいられなくなる訳もないのだが。
金庫に入れる袋を受け取って、事務所の階段を上がる。
「事情聴取で夕飯食いっぱぐれたから、深夜ラーメン行かない?」
階段下から朝陽が、いいよー味噌ね、と声を投げた。
怜太郎の勤めるバーのカウンターの端で、モスコミュールを追加したイチはスマホで最新のバイク情報をチェックしていた。
「まだ電車ある?」
「歩けんだよ、こっから」
とんと行かなくなったクラブの代わりに、家から案外近いこの店を訪れている。
特に共通の会話を要する訳でもない。
本当にただ、飲みに来ているだけなのだ。
わかっていてもつい追ってしまう己の視線を一喝する、を怜太郎は繰り返す。
「酔いつぶれても送れないからね。僕、車やめちゃったから。自転車の後ろなら乗せてもいいけど」
「あっそ」
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