はじめに

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幼い頃より僕は所謂熱しやすくて冷めやすい気質の根暗な人間だった。 両親と二人の姉に囲まれた生活は泥濘に居るみたいに心地よかった。本を読むことが好きだった僕は姉がお小遣いで買って読まなくなった本を、日に何度も読むのが日課だ。父や姉が二人とも漫画好きだったせいか、家には本の山ができていた。いつの日にか地震が起きてこの本達に潰されて死んでしまうなら、それは悪くない死に方かもしれないなんて思った程だ。でも僕は本自体に愛情を抱いていた訳ではない。僕は本の中に出てくる可憐な少女や、或いは妖艶な美女や、はたまた狡猾で男を毒牙にかけてしまう妖の女に愛情を抱いていた。     
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