ソロモンの指輪

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ソロモンの指輪

「これよ」  ロザンヌがヴィトンのバッグから六芒星が刻印された指輪を出してジオスに渡す。  ネットで売ってそうなシルバーリングであったが、ジオスはそれを暫し見つめてから左手の人差し指にはめた。  すると一瞬眩しく光り、私の心の中に祖母の姿が浮かんで見えた。 「貴方がアカデミーを去った後、スタインベックはあの写真の女性がそのソロモンの指輪を差し出しているのに気付いた。受け取ると、女性は微笑んで手を引っ込めたそうよ」 「どういう意味があるのでしょうか?もしかして、天使からのプレゼント?」  ジオスよりも先に私が焦って聞くと、ロザンヌは首を少し傾げて答えた。  それは魔女でも死神の重鎮であっても憶測でしかないようだ。 「父が言うには、一次審査はパスしたんじゃないかって。つまりジオスがあの女性のフォトグラフを撮り、死神として許されない人助けをしてしまった事で、貴方は天使への階段を上がっている」 「天使は存在する。ソロモンの指輪はヤハウェの命を受けた大天使ミカエルがソロモン王に授けた指輪だからな」  ジオスが指輪を見つめてそう言うと、カザンが嘲笑って全否定し、ロザンヌも唇を突き出して一緒に鼻で笑っている。 「おとぎ話を信じているのか?天使を見た者はアカデミーにも存在しない。それにどちらにしても、お前は今夜までにその女を殺して死神に復帰するか、俺たちに消されるしか道はねーんだよ」
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