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あたしに口を挟ませる暇もなく縷々と述べた、はちみつ色の猫に、あたしは、あたしは、ようやっと口を開く。
「あたし、は、……えあ」
「えあ、ね、なるほど。私嘘つきは嫌いではないんだ。ははは、よろしく、えあ」
ぽすん、と小さな手が――猫の、まるい、毛に包まれた、やわらかい、手が、あたしの膝に触れる。ああ、なんてやわらかくあたたかい。ばらばらとあたしの目から涙が零れる。
「どうぞ、よろしく、メード。嘘つきの、えあって言うの。よろしくね」
にぃ、とメードは猫らしく笑う。
これがあたしと、メードの、初めまして。うつくしいはちみつ猫と、嘘つきえあの、初めまして、である。
*
はちみつ色のうつくしい猫は気安い仕草であたしにまとわりつく。やわらかい毛並み。あたたかい身体。相も変わらずあたしの目からは涙がばらばらと溢れている。
「やぁ、どうも済まなかったね。私は一度話し出すと延々と話してしまうようで――ここに来た子ほぼ全員に言われた。あなたは話し過ぎですよ、お気をつけなさいって。やれやれ、直したいのは山々なんだがね、いかんせん一人の時が――もとい、一匹の時が流すぎて。注意してくれる子は案外すぐにいなくなって――独り言を延々と言ってるとこうもなるさ。おや、君、私の話があんまり長いようだったらすぐに止めて構わないのだからね」
「ええ……ごめんなさい」
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