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機能しない東京消防庁の代わりに、都心部上空からの消火活動は、神奈川消防局、千葉消防局、航空自衛隊、それに湾岸部は海上保安庁第3管区海上保安本部、海上自衛隊に割り当てられ、陸路での消火活動、人命救助については首都圏一帯の各消防局、各警察組織、陸上自衛隊が担う事となったとアナウンサーは叫び続けていた。
海外からの救援部隊受け入れについては、青葉内閣総理大臣臨時代理は留保しているというが、その理由はまだ明らかにされてはいなかった。
渋滞に巻き込まれながらも、トレーラーは目的地へと進み続けて行く。
陽はすでに沈んでいた。
助六が言った。
『ねえ。曲でもかけよっか』
反対する者は誰もいなかった。
そらねも気分転換がしたかったから、助六の提案は有り難かった。
車内に響き渡るメロディー。
ティンパニーがキレの良い低音を奏で、ヴァイオリンやヴィオラ、トランペットにサクスフォンが交わると、その音は更に迫力を増した。
そらねが言った。
『あ、この曲知ってます』
助六とゆり子は驚いていた。
助六が得意げに。
『そらちゃんには悪いけど、ここおじさんおばさんばかりだからさ。ザ ピーナッツで我慢してね』
と言いながら柳垣に目配せをして見せた。
柳垣が呟いた。
『懐かしいな、恋のフーガ...』
車内の時計の針は21時を指していた。
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