序章 朝上玄夢

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「そんなわけないですよ。私は奥月とは無縁の人間です。私は、ヤムさんをこの場で出迎える唯一無二の天使なんですから」 「……そうか、そうだよね。でも、今回の一件で、もうここには来られなくなるかも。解体による人員削減で、リストラされる可能性があるから」 「ヤムさん、そんな後ろ向きではいけませんよ。ヤムさんのいる自動車事業は、近未来開発社の中でも製品づくりに活発ですし、この間だって「アルタイル」の新型モデルが発表されたじゃないですか」 「やりがいのある職場なのは間違ない。でも、たいした地位に就いていないから切られてもおかしくない」 「長年、奥月グループに尽力しているヤムさんをクビにしたら、その人を堕天使たる私が地獄に落としてやりますよ。大丈夫、大切な家族のために汗水流しているヤムさんを「神」様は見捨てたりしません」 「ありがとう――でも、僕はそんなに善良な人間じゃないよ。こうやってキャバクラに来ては、酒を飲んだくれてんだから」  たしかに、冷静に考えるとリストラの危機にキャバクラに来ている場合ではない、と玄夢は思った。    
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