0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
日曜日の夕方、脱衣所の真ん中には、ピンク色の体重計がでん、と居座っていた。
日曜日は、お風呂で汗を流す前に、体重をはかる。社会人になってから、そう決めていた。
毎日はやらない。嫌になるから。
私が社会人になって、2年が過ぎた。
主な仕事は、経理などの事務作業。
オフィスで座りっぱなしの仕事ばかりをしていたら、私の体重は、大学を卒業したときよりも15キロ以上も増えてしまった。
体重増加の原因は、それだけじゃない。
プライベートな時間で全く運動をしていないことと、お菓子の食べ過ぎだ。
机に山積みの仕事に追われる毎日が辛くて、家に帰ってからは、寝ている時間を除くと、常に何かを食べてしまっている。
手が止まらないのだ。
体重が60キロを超えたころから、ダイエットという言葉が、頭をよぎるようになった。
だけれど、どうにもふみきれない。
やせて着たい服もない。彼氏が欲しいという気持ちにもならない。
「そろそろ体重を落とさないと、着る服がなくなるかもしれないよ」
友人達から茶化されることが嫌で、遊びの誘いも断るようになった。
それだけ私はお菓子が好きなのだ。
だから、仕方がない。
つらつらと言い訳を思い浮かべながら、私は、電子体重計に片足をかけた。
裸にバスタオルを一枚巻いた、いつものスタイルで。
体重を先週にはかった時は、68キロだった。
流石に体重が70キロを超えてしまったときは、ダイエット食品生活をおくらなきゃなあとは思っている。
まあ、多分、オーバーはしていない、はず。
体重計に乗ると、すぐに電子音がなって、画面に体重が表示される。
『70.2』
予想外の数字だった。
冷や汗をかきながら、私はそっと体重計から下りた。
バスタオルの結び目がほどけて、床に落下する。
「そっか。バスタオル分の重さを引いたら、70キロより軽くなるんだ!バスタオルって、200グラムより重いもん。うん、ギリギリセーフ」
体重計に表示されたままの数字を目に入れないようにしながら、私は体重計を棚に戻す。
いつもお風呂あがりに食べるバニラアイスは、今から楽しみになってきた。
最初のコメントを投稿しよう!