ヤマモトヒロシ

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「お前が酔いつぶれてるから悪いんだぞ。」 そう言うと、ヒロシはこっそりと男のジャケットをさぐって、財布を見つけた。 「悪く思うなよ。これはお勉強料だ。」 そう言い捨てると、足早にその場を去った。 財布には意外とお金が入っていた。 「三万円かあ。しばらく食いつなげるな。」 ヒロシはホクホク顔で、財布から金を抜くと、財布を川に投げ捨てた。 その拍子に、財布の中から免許証がこぼれ落ちた。 ヒロシは何となく、その免許証を拾い上げる。 「山本 浩」 全く同性同名ではないか。こんな偶然ってあるもんだ。 ヒロシはその免許証を、自分のジャケットの内ポケットに入れた。 ヒロシは運転免許を持っていなかった。何かに利用できるかもと思ったのだ。 金を借りて、借金をこのヤマモトヒロシに押し付けるってのもいいな。 いや、そんなことをすればすぐに足が付くだろう。 ヒロシは定食屋で、トンカツ定食を頬張りながら、しげしげと免許証を見る。 見れば見るほど自分に似てる。 世の中には、似てる人が三人は居ると言うが、本当だな。 ヒロシは、食べ終えると、勘定を払い、思い至って、その免許証の住所を訪ねた。 どうせあんなにベロンベロンで意識が無かったのだから、顔バレはしていないだろう。     
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