18人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「お前が酔いつぶれてるから悪いんだぞ。」
そう言うと、ヒロシはこっそりと男のジャケットをさぐって、財布を見つけた。
「悪く思うなよ。これはお勉強料だ。」
そう言い捨てると、足早にその場を去った。
財布には意外とお金が入っていた。
「三万円かあ。しばらく食いつなげるな。」
ヒロシはホクホク顔で、財布から金を抜くと、財布を川に投げ捨てた。
その拍子に、財布の中から免許証がこぼれ落ちた。
ヒロシは何となく、その免許証を拾い上げる。
「山本 浩」
全く同性同名ではないか。こんな偶然ってあるもんだ。
ヒロシはその免許証を、自分のジャケットの内ポケットに入れた。
ヒロシは運転免許を持っていなかった。何かに利用できるかもと思ったのだ。
金を借りて、借金をこのヤマモトヒロシに押し付けるってのもいいな。
いや、そんなことをすればすぐに足が付くだろう。
ヒロシは定食屋で、トンカツ定食を頬張りながら、しげしげと免許証を見る。
見れば見るほど自分に似てる。
世の中には、似てる人が三人は居ると言うが、本当だな。
ヒロシは、食べ終えると、勘定を払い、思い至って、その免許証の住所を訪ねた。
どうせあんなにベロンベロンで意識が無かったのだから、顔バレはしていないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!