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同性同名の山本浩の家は小ぢんまりとしてはいるが、なかなかシャレた良い家だった。
玄関口から庭へは簡単に入ることができた。
どうやら、家人は留守らしい。ダメ元で、庭に面した掃き出しのサッシ窓に手をかけると、すっと窓が開いた。
無用心だな。ヒロシはドキドキしながらも、家の中を漁った。
足音を忍ばせ、家中をくまなく探索したが、誰も居ない。
これはチャンスだ。ヒロシは金目の物がありそうなところを家捜しし始めた。
「何やってんの?」
後ろから声をかけられ、心臓が飛び跳ねた。
慌てて逃げようとするヒロシに女はたずねた。
「昨日は帰ってこなかったけど、どこほっつき歩いてたのよ!」
腰に手を当てて、女はヒロシを睨みつけた。
どうやら女は、自分の夫「山本 浩」と勘違いしているらしい。
いくら似てるからってわかりそうなもんだろう。
「ああ、すまん。飲みすぎて。公園のベンチで寝てたわ。」
ヒロシは取り繕ってみた。
「まったくもう!部長さんから電話があったわよ!ちゃんと連絡して!会社、どうするの?」
「あ、ああ。今日は、気分が悪いから。休むわ。」
「しょうがない人ね。ほら、部長さんの電話番号!」
そうメモを渡されて、仕方なくヒロシは体調不良で会社を休むと連絡を入れた。
「明日はちゃんと会社、行きなさいよ!」
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