ヤマモトヒロシ

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そう言うと、その女は洗濯物を抱えて行ってしまった。 今だ!逃げなければ。そう思い、侵入した窓から外に出ようとしたとたんに、洗濯物を干していた女に捕まった。 「どこ行くのよ!会社サボってるのに、出歩かないでちょうだい!寝室で寝てなさいよ!」 そう一喝され、二階の寝室に戻されてしまった。 まいったな。靴は諦めよう。「山本 浩」の靴を履いて逃げるか。 ああ、でも玄関から逃げるにしても、あの洗濯物を干している女から丸見えだな。 しかし、あの「山本 浩」の女房と思われる女も、鈍いのかな。 普通は、自分の亭主じゃないことくらい気付くだろうに。 それにしても、「山本 浩」は帰っていないのだろうか。 そんなことを考えていたら、逃げるタイミングを失ってしまい、女から昼飯を食べるように促された。 何とも不思議な気持ちだった。 見知らぬ山本浩の妻と、食卓を挟んで飯を食う。 食卓には、おいしそうな焼き魚と卵焼き、ホウレンソウのおひたしと、味噌汁が並んでいた。 昼のワイドショーではニュースが流れていた。 「〇〇県〇〇市の路上で身元不明の遺体が発見されました。」 ヒロシは思わず、目が釘付けになった。それは、間違いなく、自分が昨日寝ていた路上だったからだ。 死んでたのか、山本 浩。     
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