ヤマモトヒロシ

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ヤマモトヒロシ

頭がガンガンする。 ここはどこだ? 朦朧とする意識を無理に叩き起こしてあたりを見回した。 背中と尻には冷たく堅い感覚。 ようやく自分が道端の電柱にもたれて足を投げ出して座っているのだと認識した。 ああ、たぶん酔っ払ってこんなところで寝てしまったのか。 それにしても、右の肩だけが温かい。 ふと右肩を見ると、人が自分の肩にしなだれかかって寝ていた。 「うわぁ。」 ヤマモトヒロシは驚いて立ち上がった。 すると、そいつはその弾みでゴロリとアスファルトに転がった。 男だ。よくよく見てみると、なんだか自分に似ている。 「もしもーし、大丈夫ですか?」 ヒロシは、その男の肩を揺すって声をかけた。 その男はピクリとも動かない。 やれやれ、こんな所で寝て。風邪でも引いたらしらないぞ。 ヒロシは自分のことも棚上げにそんなことを考えていた。 「人のことなんて、構ってられないっつうの。」 ヒロシは一人呟いた。 会社をリストラされ、女房には三行半をつきつけられ、家を追い出され途方にくれていた。 行くあてもなく、やけになって、なけなしの金で安酒を飲んでこんなところで寝てしまったのだろう。 従って、ヒロシは今、一文無しだった。ヒロシは魔がさした。     
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